私が一人暮らしをしていた頃の話です。学生でお金がなかった私は、本棚を買う代わりに、引っ越しで使ったダンボールを、そのまま本棚代わりにしていました。丈夫そうなダンボールをいくつか選び、横向きに積み重ね、そこに本をぎっしりと詰め込んで。我ながら、安上がりで賢いアイデアだと、当時は満足していました。その「ダンボール本棚」が、後に、恐怖の巣窟と化すとも知らずに。異変に気づいたのは、梅雨の時期でした。部屋の壁に、銀色に光る、魚のような、奇妙な虫が這っているのを、時々見かけるようになったのです。シルバーフィッシュ、和名をシミという、紙を食べる虫でした。最初は、それほど気にしていませんでした。しかし、ある日、ダンボール本棚から、しばらく読んでいなかった本を取り出そうとした、その瞬間。本の裏側から、数匹のシルバーフィッシュが、サササッと、四方八方に散っていくのが見えました。私は、悲鳴を上げそうになりながら、その本を床に落としてしまいました。恐る恐る、ダンボールの中を覗き込むと、そこには、本の隙間でうごめく、無数のシルバーフィッシュと、その抜け殻や、砂粒のようなフンが、びっしりと溜まっていました。そして、いくつかの本の表紙は、まるでヤスリで削られたかのように、表面がザラザラにかじられていたのです。私の即席の本棚は、いつの間にか、害虫たちの巨大なレストラン兼マンションと化していました。私は、その日、半泣きになりながら、すべての本を取り出し、一冊一冊、虫がいないかを確認し、そして、あの忌まわしいダンボールを、すべてゴミ袋に詰め込みました。この苦い経験から学んだのは、ダンボールは、決して収納家具の代わりにはならない、ということです。そして、安易な節約は、時として、お金では償えないほどの、精神的なダメージと、大切な物への被害をもたらすのだという、痛い教訓でした。
私の恐怖体験、本棚になったダンボール