ワカサギ釣りやタナゴ、フナといった小物釣りにおいて、釣り餌の王様として君臨するのが「赤虫」です。なぜ、この小さな赤い虫は、これほどまでに魚たちを魅了し、釣り人を支え続けているのでしょうか。その理由は、赤虫が魚にとって「自然界の最高のご馳走」であることに他なりません。魚が赤虫に強く反応する第一の理由は、それが彼らの普段の食事そのものだからです。赤虫(ユスリカの幼虫)は、川や池、湖といったあらゆる淡水の水底に生息しています。魚たちは、日常的に泥の中を探り、この赤虫を捕食しています。つまり、釣り人が使う赤虫は、魚にとって見慣れた、安全で栄養価の高い食べ物なのです。警戒心なく口を使ってしまうのは、ごく自然なことと言えるでしょう。第二に、その「動き」と「匂い」が魚の本能を刺激します。針につけられた赤虫は、水中でかすかに身をくねらせ、生き物特有の微弱な振動を発します。この動きが、魚の側線(水流や水圧の変化を感じ取る感覚器官)に感知され、その存在を強くアピールします。さらに、赤虫の体液から溶け出すアミノ酸などの匂いは、魚の嗅覚を強烈に刺激し、食い気を誘います。ところで、釣り餌として売られている「アカムシ」には、実は二種類あることをご存知でしょうか。一つは、本物のユスリカの幼虫である「赤虫」。そしてもう一つが、「サシアカ」と呼ばれるものです。これは、サシ(ハエの幼虫)を赤い色素で染めたもので、赤虫よりも体が大きく丈夫なため、針に付けやすいというメリットがあります。主に渓流釣りなどで、より大きな魚を狙う際に使われます。赤虫を針に付ける際は、頭の硬い部分に針先を少しだけ通す「チョン掛け」が基本です。これにより、水中での動きが自然になり、魚へのアピール度が高まります。また、数匹をまとめて付ける「房掛け」も、ボリュームが出て効果的です。魚の生態を理解し、赤虫という最高の餌を使いこなすこと。それが、釣果を大きく左右する鍵となるのです。