蜘蛛がゴキブリなどを食べてくれる益虫であることは理解できても、やはり同じ家の中で一緒に暮らすのは耐えられない。しかし、殺してしまうのは何だか忍びない。そう考える心優しい方も少なくないでしょう。幸いなことに、足が長い蜘蛛をはじめとする家の蜘蛛を、その命を奪うことなく、平和的に家から退去してもらうための、いくつかの有効な方法が存在します。まず、最も手軽で、蜘蛛へのダメージが少ないのが「紙とコップ(容器)」を使った捕獲方法です。壁や床にいる蜘蛛に、そっと透明なコップやプラスチック容器を被せます。この時、透明な容器を使うことで、蜘蛛の動きが見えるため、恐怖心が少し和らぎます。そして、容器の口と壁(床)の間に、ゆっくりと、しかし躊躇なく、厚紙やハガキなどの薄くて硬い紙を滑り込ませて、蓋をします。こうすれば、蜘蛛を安全に容器の中に閉じ込めることができます。あとは、そのまま外に運び、できるだけ家から離れた草むらなどで、そっと逃がしてあげるだけです。この方法は、イエユウレイグモのような繊細な蜘蛛から、アシダカグモのような大きな蜘蛛まで、幅広く応用できます。次に、ほうきとちりとりを使う方法もあります。特に、壁の高い場所にいる蜘蛛に対して有効です。ほうきの毛先で優しく蜘蛛を壁から払い落とし、それを下で構えたちりとりで受け止めます。蜘蛛を驚かせすぎると、猛スピードで逃げられてしまうため、あくまで「そっと」行うのがコツです。巣を張るタイプの蜘蛛であれば、巣ごとほうきに絡め取って、そのまま外に出すこともできます。また、蜘蛛が嫌がる「匂い」を利用して、自主的に家から出て行ってもらう、という間接的な方法もあります。蜘蛛は、ハッカやミント、レモングラス、シダーウッドといった、スッとする清涼感のある香りを嫌うと言われています。これらのアロマオイル(精油)を数滴垂らした水をスプレーボトルに入れ、蜘蛛がよく現れる場所や、侵入経路となりそうな窓際や玄関などに吹き付けておきます。この匂いを不快に感じた蜘蛛が、家の中を居心地が悪いと感じ、自ら外へ出て行ってくれる効果が期待できます。これは、追い出すだけでなく、新たな蜘蛛の侵入を防ぐ予防策としても有効です。これらの方法は、殺虫剤を使うような即効性はありませんが、生命を尊重し、自然との共存を考える上での、優しく、そして賢明な選択肢と言えるでしょう。