家の軒下やベランダにアシナガバチの巣を見つけた時、「まだ小さいから大丈夫だろう」「刺激しなければ襲ってこないだろう」と、つい放置してしまう人がいます。しかし、その安易な判断が、後々深刻な事態を招く可能性があることを、あなたはご存知でしょうか。アシナガバチの巣を放置することは、様々なリスクを時間と共に増大させる、非常に危険な選択なのです。最大のリスクは、巣が驚異的なスピードで「巨大化」することです。春先に女王バチ一匹で始まった巣は、働きバチが羽化し始めると、その成長速度を一気に加速させます。条件が良ければ、数週間で手のひらサイズを超え、最盛期である夏から秋にかけては、バレーボールほどの大きさにまで達することもあります。巣が大きくなるということは、すなわち、そこに住むハチの数が数十匹から、時には百匹以上にまで増えることを意味します。ハチの数が増えれば、当然、巣を守ろうとする防衛本能も強くなり、巣全体の攻撃性も格段に増していきます。最初は巣にかなり近づかなければ威嚇してこなかったハチも、巣が大きくなるにつれて、数メートル離れた場所を人が通るだけで敏感に反応し、威嚇してくるようになります。これは、日常生活における深刻な脅威となります。洗濯物を干すためにベランダに出ただけで、威嚇される。庭の手入れができない。窓を開けることさえ躊躇われる。このような状況は、大きな精神的ストレスとなるでしょう。さらに、子供やペットがいるご家庭では、そのリスクは計り知れません。好奇心旺盛な子供が、危険性を知らずに巣に近づいてしまったり、ペットがじゃれついて巣を刺激してしまったりすれば、集団で攻撃され、命に関わる事態に発展する可能性も否定できません。また、巣がお隣の家との境界近くにある場合、隣人が刺されるなどの被害が出れば、ご近所トラブルの原因ともなり得ます。巣を放置して被害が拡大した後では、駆除の費用や手間も、初期段階に比べてはるかに大きくなります。アシナガバチの巣は、時間と共に危険性が増していく時限爆弾のようなものです。発見したら放置せず、できるだけ早い段階で、安全かつ確実な方法で対処することが、あなたとあなたの家族、そしてご近所の安全を守るための、唯一の正しい選択と言えるのです。