アシナガバチの毒は、スズメバチほど強力ではないとされていますが、それでも刺された場合に引き起こされる症状は、決して軽視できるものではありません。特に、アレルギー体質の人や、過去に蜂に刺されたことがある人は、命に関わる重篤な事態に陥る可能性も十分に考えられます。万が一、アシナガバチに刺されてしまった場合に備え、その症状と、直後に行うべき正しい応急処置の方法を、正確に理解しておくことが非常に重要です。アシナガバチに刺された直後、まず感じるのは、針で刺されたような鋭い、そして焼けるような激しい痛みです。その後、刺された箇所を中心に、赤みと熱感を伴う強い腫れが広がっていきます。この局所的な症状は、通常、数時間から数日でピークを迎え、一週間程度で徐々に治まっていきますが、その間の痛みやかゆみは相当なものです。もし刺されてしまったら、まずはパニックにならず、すぐにその場から静かに離れてください。近くに巣がある場合、一匹目を刺激したことで、他の蜂が興奮して襲ってくる可能性があるからです。安全な場所に移動したら、次に応急処置を行います。まず、刺された箇所を指でそっとつまみ、毒を絞り出すようにします。この時、口で吸い出すのは、口内に傷があるとそこから毒が入る危険性があるため、絶対にやめてください。次に、傷口を流水でよく洗い流します。これは、皮膚の表面に残った毒液や、針に付着していた雑菌を洗い流し、二次的な感染を防ぐためです。その後、濡れたタオルや、保冷剤をタオルで包んだもので、患部を徹底的に冷やします。冷却は、痛みを和らげ、腫れを抑え、毒の吸収を遅らせる効果があります。そして、抗ヒスタミン成分やステロイド成分を含む軟膏(虫刺され用の市販薬で可)があれば、それを塗布します。通常は、これらの処置で症状は落ち着きますが、最も警戒すべきなのが、全身に現れるアレルギー反応「アナフィラキシーショック」です。刺されてから数分から数十分以内に、全身のじんましん、吐き気、腹痛、息苦しさ、めまいといった症状が現れた場合は、命に関わる危険なサインです。ためらわずに救急車を呼ぶか、大声で助けを求めてください。