家の中で蜘蛛を発見した時、多くの人は反射的に「不快だ」「気持ち悪い」と感じ、すぐにでも駆除しようとします。しかし、もしその蜘蛛が、ひょろりと長い脚を持つ「イエユウレイグモ」や、巨大で素早い「アシダカグモ」であったなら、その行動は、あなたの家の平和を守ってくれている、頼もしい用心棒を自らの手で葬り去る行為になってしまうかもしれません。なぜなら、これらの家の蜘蛛は、人間にとっての害虫を専門に狩る、非常に優れたハンターであり、「益虫」としての側面が極めて強いからです。彼らが家の中にいる最大の理由は、そこに豊富な「餌」があるからです。そして、その餌とは、私たちが本当に根絶したいと願っている、本物の害虫たちなのです。例えば、風呂場や洗面所で見かけるイエユウレイグモ。彼らは、その雑然とした巣で、アレルギーの原因となるダニや、本や壁紙を食べるチャタテムシ(紙魚)、あるいは鬱陶しいチョウバエやキノコバエといった、非常に小さな害虫を捕食してくれます。私たちが気づかないようなミクロの世界で、彼らは衛生環境の維持に貢献してくれているのです。一方、その巨大さで私たちを恐怖に陥れるアシダカグモは、「ゴキブリハンター」としてその名を知られています。彼らは巣を張らず、家の中を徘徊し、その驚異的なスピードとパワーで、あの忌まわしきゴキブリを捕食します。一晩で数匹のゴキブリを仕留めることもあると言われ、アシダカグモが住み着いた家では、ゴキブリが絶滅したという話さえあるほどです。これらの蜘蛛は、人間を襲うことはなく、毒も基本的には無害です。彼らは、ただ黙々と、私たちの家を害虫の脅威から守ってくれているのです。もちろん、その見た目や、巣が張られることへの不快感は理解できます。しかし、次に家の蜘蛛に遭遇した時は、一方的に「敵」と決めつける前に、少しだけ考えてみてください。その蜘蛛は、あなたが眠っている間に、ゴキブリやダニと戦ってくれている、家の守り神なのかもしれない、と。
その蜘蛛は家の守り神かもしれません