なぜ虫はダンボールを好むのか
なぜ、ゴキブリをはじめとする多くの害虫は、これほどまでにダンボールを好むのでしょうか。その理由は、ダンボールが、彼らが生き延び、繁殖するために必要な、あらゆる条件を、奇跡的とも言えるほど完璧に満たしてしまっているからです。その秘密は、ダンボールが持つ、いくつかの特性にあります。第一に、その「構造」です。ダンボールは、波状に加工された中芯(なかしん)を、二枚の紙で挟んだ三層構造になっています。この波状の部分が作り出す、無数の暗くて狭い隙間は、体長わずか数ミリの虫たちにとって、外敵から身を守り、安心して卵を産み付けるのに、まさに理想的な空間なのです。外からの光を遮り、内部の温度と湿度を一定に保つ、天然のシェルターとして機能します。第二に、「素材」そのものが、彼らにとっての餌となります。段ボールの接着に使われる糊には、多くの虫の好物であるデンプンが含まれています。また、ダンボールの主原料である紙(セルロース)も、シミなどの害虫にとっては、貴重な栄養源です。さらに、輸送の過程で、様々な食品の匂いが染み付いていることもあり、これが、嗅覚の鋭い害虫を、強力に誘引する原因となります。第三に、「保湿性」です。紙製品であるダンボールは、周囲の湿気を吸収しやすく、ジメジメとした環境を好む、チャタテムシやゴキブリにとって、快適な湿度を保ってくれます。暗い、狭い、暖かい、餌がある、そして適度な湿り気がある。これらは、まさに、害虫たちが繁殖するための「五つ星ホテル」の条件です。私たちの生活を便利にしてくれるダンボールが、皮肉にも、彼らにとっての最高の住処を提供してしまっている。この事実を理解することが、ダンボールを介した害虫の侵入を防ぐための、第一歩となるのです。